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[2053] Re:放射光を用いたXRD測定の件 2010-09-10 11:06:21
お名前 : AA [ホームページ] カテゴリー : 【計測分析技術の話題】【計測分析技術
吸収端の利用範囲はかなり広いと思いますが、ここでは私が理解してる範囲で「X線回折による結晶構造の決定」について説明してみます。
X線の散乱・回折とは、試料中の電子が入射X線の振動電場によって強制振動させられた結果、同じエネルギーのX線を放出することによって起こります。試料中の電子は原子核の周りにK軌道やL軌道などの軌道をとって回っていて、それは軌道に特定のエネルギーで原子核と結合しています。一個の原子がX線の散乱に寄与する電子を何個持っているかを表したものを原子散乱因子と呼びます。結晶の構造因子は、この原子散乱因子から計算できます。吸収端以外では、この数はほとんど原子番号と同じ実数です。このような通常X線を使う場合、元の結晶構造と、それを鏡に写した鏡像では構造因子の絶対値は同じになるため、得られる回折強度も同じになり、両者を区別することはできません。
吸収端を使うとこの区別ができ、絶対構造が決定できます。吸収端とは、電子の結合エネルギーに近いX線を当てると電子が共鳴振動し、散乱や吸収が大きく変化し(そのため異常分散と呼ばれています)吸収量が大きく変わるX線エネルギーを指します。共鳴振動では、調和振動子のモデルで分かるように散乱因子は複素部を持ちます。この効果により構造因子の絶対値は元の像と鏡像では異なるため、どちらの構造が正しいか判別できます。吸収端付近で波長を変えて測定し、たんぱく質などの複雑な構造を決めるのには、このような多波長異常分散法(MAD法)が用いられます。これらはエネルギー(波長)可変の放射光の利用が理想的です。一方、最近では汎用装置の性能向上により、吸収端以外でも原子散乱因子に存在する僅かな複素部を使うと、同様な構造解析が可能な場合もあるそうです。
 
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 放射光を用いたXRD測定の件 XRD 2010-09-08 00:38:00 2050 計測分析技術
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