TSCの由来
つくば半導体コンソーシアム( 2006~2011) について
Tsukuba Semiconductor Consortium:TSC
TSCのWEB 表紙に使われていたイメージ図(上図と右の2点の図)
これまで“計測分析技術交流広場”を担当していた つくば半導体コンソーシアム(Tukuba Semiconductor Consortium) の業務は、 2011年3月から産業技術総合研究所(産総研)が設置したナノエレクトロニクス計測分析技術研究会 (Tsukuba Society of Characterization and Analysis for Nanoelectronics) に継承されました。 今後もTSCのロゴ、WEBサイトを使用するにあたって“TSC”の由来となった“つくば半導体コンソーシアム;TSC”の活動概要を記録することに致しました。
つくば半導体コンソーシアム(TSC)
- (株)半導体先端テクノロジーズ(Selete)及び半導体MIRAIプロジェクトを中心とした、複数の半導体プロジェクト及び関連機関の集合
- 産総研のつくばスーパークリーンルームを拠点
- TSC総括リーダーの一元的マネージメントの下で連携して運営
- 2006年4月に発足し2011年3月末まで5年間の活動を経て終了
- 研究者交流、先端技術分野の研究者・技術者育成、計測・分析技術WEB等、その多くの成果は産総研を中心に継続運営中
TSCのミッション
- 実用化加速の連携拠点: 先端半導体の基礎研究から実用化までの研究開発加速をTSC連携総括リーダーの下で一元的にマネージメントする。
- 研究開発活動のCOE: 国内外の関連研究機関との連携を深め、先端ICのデバイス・プロセス技術の基礎的研究及び人材育成を通じて研究開発のCOE(Center of Excellence)とする。
主な活動と成果
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TSCではURVICネットによる研究の連携、産総研と半導体デバイスメーカーの研究交流、半導体・ナノエレクトロニクス分野の人材育成、計測分析技術の研究者の交流を推進した。
(URVICネット: University、Research Institute、Venture Company、Industry、Consortia でのR&D、人材育成、ベンチャー企業支援、COE活動 )
TSCの組織構成
URVIC-Net
TSCでは、産学独連携活動としてURVICネット活動を推進した。URVICネットは、University, Research Institute, Venture companies, Industries, Consortia の間でネットワークを作り、産業界が広く国内の大学や独立行政法人研究機関と相補的に協力し、高度化・複雑化する半導体プロセス・デバイス技術を迅速かつ正確に理解し、研究開発の課題解決を早める意図で設置された。
URVICネットの活動の概要を以下に記します。High-Kネット及びEUVレジスト・ネットはSelete研究部門が、M/Cネットは産総研研究部門が主導し、その他のネット活動はTSC研究交流推進委員会が支援・実施しました。
1. High-k ネット
MOSFETの心臓部であるゲート絶縁膜に使われるHigh-K絶縁膜の研究開発を進めるに際し、大学・独立行政法人の高い学識を民間企業が活用し、一方、実用化促進の場では学生の教育環境を企業側が提供するという相補関係が実現できた。ネット活動を通じての論文発表件数は270件を越え、フェルミレベル・ピニング等のHigh-K ゲ-トの本質的な現象の解明がなされた。
2. MtM (More than Moore)ネット
微細化限界の追求(More Moore)とは異なる方向として、IC技術の応用デバイスを広げるMore than Moore領域(MEMS、BIO、RFなど)へ新規技術の開拓を目指して勉強会が開催された。従来交流が少なかったMEMS、BIO、3次元集積素子などの分野の研究者・技術者、さらにエレクトロニクス業界に通じたアナリストなどを講師に招き、2007年9月から2008年3月までの半年間で勉強会が12回開催された。これらを契機に、応用物理学会では、MEMSシンポジウムが初めて開催され、集積化MEMS技術研究会が発足した。
3. M/C (Metrology/Characterization )ネット
ナノレベルに微細化が進んだ半導体技術の特性を極限まで引き出すためには、新原理計測技術が要求される。そのアイデアの醸成と発展を目的として、独立行政法人及び大学をはじめとする研究者の交流がネット活動を通じて精力的に実施された。3回のシンポジウムと4回のワークショップ及び計測分析装置メーカーとの研究交流会が開催された。トランジスタ作成プロセス、多層配線プロセス、リソグラフィーの各技術において課題に対応した新規技術、例えばメタルゲートの局所ひずみに対してラマン散乱による計測技術など新しい計測分析技術の紹介がなされた。
4. EUVレジスト・ネット
22nm線幅以降の微細加工に用いるEUVレジスト材料の探索とレジスト・プロセス開発には新規レジスト材料の合成、物性評価・解析、リソグラフィーでの評価が必要である。大学でのレジスト材料合成と新規解析手法の検討、Seleteでの露光・現像とパターン解析評価の一連の研究を行い、レジストメーカー研究者を交えた研究会を概ね3ヶ月に一度の頻度で実施した。その結果、化学増幅型ポジレジストでは26nm線幅の解像度を得た。また考案したレジスト反応シミュレーションによりフッ素含有レジストで超高感度化の可能性が確認された。これらの活動を通じて大学と共同で14編の論文と学会発表を行った。
5. 計測分析技術WEB
ナノエレクトロニクス時代の計測・分析技術について国内の研究者・技術者が日頃抱えている疑問や課題をWEBの掲示板で質疑応答を通じて解決し、全体の技術水準を向上させ、幅広い応用展開を図る目的で2008年8月にWEBを公開した。年月とともに利用者が増加し、これに応えて、掲示板以外にも計測分析技術マップ、計測分析技術一覧と技術の概要を記した解説記事、略号対応表などを追加した。質疑の多い技術については、WEB誌上で専門家が解説する“計測分析サロン”を掲載した。2011年3月のTSC終了後も産総研主体に継続して編集活動を続けており、交流の場を拡大するとともに、技術主体ではありながら多くの人に活用しやすく親しみのもてるサイトを目指して運営を行っている。
6. 人材育成
Seleteでの研究インターンシップとして、2006年度から全国の大学から学生をSeleteの研究部が受け入れ、ナノエレクトロニクス時代を迎えて一企業では対処できない人材開発を行う目的でインターンシップを実施した。産学独連携の一環としてTSC及びナノエレ拠点を中心とした研究開発を推進できる次代のリーダー的研究者の養成を目的とした。またCMOS技術をベースにナノエレクトロニクス時代の実践的な教育を行い、半導体技術の魅力をアピールして企業への参入を勧誘する意図も盛り込んだ。インターンシップの実践的な教育を補完して体系的な半導体技術の知識と今後の技術動向を講義する研修を、2008年8月25日から連続5日間集中講義として実施した。産学独から、先端技術をリードする大学教授と研究者に講師をお願いし、受講者も大学院学生、独法研究機関ポスドク、企業の若手研究者の約30名が参加した。終了後のアンケート調査によれば、ほぼ全員の参加者から好評であった。 2009年度以降は、産総研がこの研修を引継ぎ、ナノテク中核人材養成プログラムのうちナノエレクトロニクス講義として実施しており、2010年度は日本工学会の講師も参加して講義内容を拡大している。
7. 研究交流勉強会
ナノエレクトロニクス領域での研究を活性化し、研究推進と実用化を加速する目的で、産総研の多岐にわたる研究内容を半導体デバイスメーカーに紹介し共同研究の契機とするため2008年9月から勉強会を2011年3月まで9回開催した。微細加工追求テーマからMore than Moore領域までの産総研のテーマを考慮しカーボンナノチューブ、バイオ、MEMSなどの研究テーマについて講演形式でのヒアリングを行った。参加者は毎回20名前後であったが白熱した討議があり、パワーデバイス、ロボットなどは勉強会終了後、共同研究の引き合いがあった。また医療・ヘルスケア、スマートグリッドなどの省エネ、農業、交通システム、ロボット、照明、など将来の半導体応用分野についてもSIRIJ(半導体産業研究所)からヒアリングし討議をする機会を作って勉強会にフィードバックした。
以上
参考資料: Selete15周年記念誌ほか