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編集後記

2012年4月

今年も桜が満開となり、震災後1年経った今、東京では何事も無かったかのように咲く桜が春の季節を否応なく感じさせます。 東京で桜の名所は千鳥ヶ淵、上野恩賜公園、新宿御苑、隅田川沿いなどと名所談義もあるかも知れません。私が凄みを感じたのは、千鳥ヶ淵でした。満開の時期には、皇居のお濠の石垣と水面を埋め尽くすほど満面に豪華絢爛を誇る圧倒的な咲きっぷりで、風情を飛ばすほど大胆に咲き乱れます。

しかし昨日はそこを外して、少し庶民的な感じの中目黒駅から池尻大橋までの目黒川沿いを歩きました。ここも大勢の人で歩くのもやっとという程でしたが、日本人は勿論、欧米やアジアなど海外の人が川縁りに小さなテーブルを持ち出して、日本酒と団子ではなく、ワインやビール等の酒類とウインナー、ピザ、鶏肉の丸焼きなどで花見を楽しんでいました。いまや日本語の花見は世界で“HANAMI”として通用するそうです。ソメイヨシノはワシントンDCのポトマック川畔の他、似た品種が他の国で見られますが、酒と月と夜桜などの楽しみ方は日本独特の文化です。最近では少し形を変えて花見の習慣が海外でも広まってきていると聞きました。

日本の花見の文化がアニメのように世界に拡散しつつあると思うと、半導体やナノエレクトロニクスの技術についても文化的な使い方と言わないまでも、その膨大な技術所産を多様な方面に展開することがあっても良いのではないかとついつい思ってしまいます。超微細加工の先端技術研究開発を1980年代に誇っていた日本が、30年後には産業として行き詰った理由は多く挙げられますが、ひとつにはDRAMを作れば売れたため、微細化一辺倒で技術の応用面を考え切れなかった点が挙げられています。 2000年の初め頃にSOC (System on a Chip) の概念が掲げられましたが、今や開発費の高騰で応用デバイスを企画するにもハイリスクとなり、簡単ではない様相です。

計測分析技術もこうした教訓を生かして、半導体だけでなく、ナノエレクトロニクスをはじめ多くの異分野に展開することを考える時代となっているように思います。新規技術を開発する時点で、何に使えるか、どこに応用できるか、コストダウンの方法など、技術分野を越えて、技術応用のマネージメントやマーケッティングの考え方が、研究者・技術者にとってより一層重要になっているのではないでしょうか? 桜の品種改良技術と並行して桜を楽しむ方法が世界的に広がってきているように・・・。

HP編集委員

過去の編集後記

編集後記執筆者一覧(50音順)(所属は執筆当時)

  • 井上 靖朗 独立行政法人 産業技術総合研究所
  • 小池 正記 独立行政法人 産業技術総合研究所
  • 嶋崎 綾子 株式会社 東芝
  • 高野 史好 独立行政法人 産業技術総合研究所
  • 多田 哲也 独立行政法人 産業技術総合研究所
  • 中村 誠 株式会社 富士通研究所
  • 畑 良文 パナソニック・タワージャズセミコンダクター 株式会社
  • 服部 信美 ルネサスエレクトロニクス 株式会社
  • 宮武 久和 独立行政法人 産業技術総合研究所
  • 渡辺 雄一 オン・セミコンダクター